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挿絵

下記の事例を読んで、少し考えてください。

テーマ「積み重ね」

とあるカップルの彼氏は、彼女の家で、料理に挑戦することにした。彼氏はほとんど料理をしたことがないが、彼女の体調があまり良くないし彼女は休みたそうだったので、作ってあげることにしたのである。彼女はやや不安もあったが、まぁレシピもあるし、けんちん汁ぐらいは作れるだろうと思っていた。

だが、彼氏はレシピ本をじーっと眺めているし、レシピに書かれてるニンジンの大きさってどの程度なのかとか、中火ってどれくらいかとか言っていて、とにかくうっとうしいのである。彼女は買い物も含めて1時間もあればできると思っていたし、レシピがあればできるだろうと思っていたが、結局彼氏にイライラして自分で作ることにしたのであった。

この事例について「およそ妥当なこと」を言っているものは下記のうちどれでしょうか。一つ選んでみましょう。

◆レシピ通りにもできない彼氏は料理の才能がないと言える
◆彼女の読みが甘かったのだと言える
◆そもそも彼氏は何をやっても要領が悪いのだと予想される

▼正解とコラムを読む▼

校長の解説正解「彼女の読みが甘かったのだと言える」

この彼氏は要領が悪いわけではない。彼女が誤解していたのである。レシピがあれば料理というものは作れるものだ、と。校長も一人暮らしを初めてしたときには料理が全くできなくて、まぁ料理本があれば自然とできるものだと思っていたのだが、そうではなかった。1カップがどれくらいとか、中火がどんなものかとか、書かれていない前提がたくさんあって、「料理するのがほとんど初めての人にでも料理できるようにさせてくれるマニュアル」ではないのである。当たり前のようだが当時の校長には当たり前ではなかったし、問題文の彼女も、彼氏が料理の様々な前提すら持ち合わせていないことを見落としていた。

楽譜があれば弾けるでしょ、というわけにはいかないように、レシピがあっても、そこそこの積み重ねがなければ料理はできない。

日本一有名なゲームと言っても過言ではない「ドラゴンクエスト」には、とても印象的であまりにも有名なオープニングの音楽があるが、その「序曲」というのは5分で完成したそうである。作曲したすぎやまこういち氏は「54年と5分で出来た曲」と言った(その筋では有名なエピソードである)。つまり、それまでの54年があるから5分でできたのだ、ということである。たった5分だが、5分でできたわけではない。

もし誰かが、すぎやまこういち氏に「5分でできるんでしょ?うちにもちょっとタダで曲をつくってよ。いいじゃん5分ぐらい」と言ったら(そんな人はいないだろうが)、それは大変な侮辱である。彼の5分は、50年60年の結晶なのだから、ただの5分ではない。

何が言いたいかというと、今日は「蓄える」ことの重要さを伝えたいのである。

例えば「10億円の資産がある」という状況を考えたときに、消費的な考え方をするなら「10億円の贅沢できる金がある」とも言えるが、投資的な考え方をするなら「次の金を生み出す資金が10億円ある」とも言える。資産ゼロの人が1億円生み出すのは途方もなく難しいが、資産10億円の人が1億円生み出すのは、それよりもはるかに簡単だろう。お金と能力は若干違うところがあるが(お金は簡単に消費できるし減る)、とにかく「蓄える」ということは、次に生み出すものを増やすという効果がある。これは素晴らしいことだし怖いことでもある。

問題文の彼氏と彼女では、料理をしたときの「1時間」は、まるで価値の違う1時間である。すぎやまこういち氏の5分は、普通の5分ではなかった。料理にせよ音楽にせよ、いや人生全般において、何かを蓄えれば蓄えるほどに累進的に過ごす時間は濃くなっていくということである。逆に消費的に生きると、様々なことを激しく積み重ねた人とは、とんでもない差ができるということでもある。それは単に仕事とかの能力だけでなく、いろいろなことを知っているかとか、人とどれだけ関わったかとか、そういうことも含めて言えることだ。

社会人全体で見ると「自分の力を向上させていこうと思って努力している人」は1割ぐらいしかいない(だから向上心を持ってる時点で差別化できる)、と言っている人がいたが、仕事に限らない場合には、時間を自分の向上のために使おうと考える人がどれほどいるだろうか。やはり2割とか3割とか、かなり少ないのではないだろうか。

存在に良いも悪いもないように、人生の1分に、良い1分と悪い1分、価値のある1分と価値のない1分、というのもないのだが、少なくとも「世の中に影響力のある何かができる1分」というものはあって、それは蓄積によって「累進的」に上下の差がついていく。そして、そういう力(時間)が欲しいのなら、それと、この「累進的」ということの怖さを感じ取れるのなら、日々努力して、何でもいいから蓄積すべきである。

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