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挿絵

下記の事例を読んで、少し考えてください。

テーマ「咳」

とあるカップルの彼女は、ある日の深夜に彼氏と電話したのだが、冷たく対応してしまった。彼氏が急きょ遅い時間のバイトに入り、デートが潰れたからであり、「今ごろ電話してきて何なの」などと言ってしまったのである。彼氏も疲れている中、電話してくれたのに、である。

しかも、もうすぐ彼女の誕生日なのだが、その話題になったときも「彼氏らしいこともたまにはするのね」と皮肉を言ってしまい、そこで彼氏に電話を切られた。実は前にもそういったことが何度かあったから、彼女はしばらくして「またやってしまった」「なんで馬鹿なことを繰り返すのか」と落ち込むのであった。

この事例について「およそ妥当なこと」を言っているものは下記のうちどれでしょうか。一つ選んでみましょう。

◆彼女は、皮肉でも何でも言いたい放題で良いと言える
◆皮肉など彼女の用いた表現が良くないと言える
◆彼女はもっと我慢すれば二人とも前向きになれたと言える

▼正解とコラムを読む▼

校長の解説正解「皮肉など彼女の用いた表現が良くないと言える」

問題文の彼女は、彼氏に相当に甘えていると言えるだろう。彼氏の事情を考えない皮肉などを浴びせても、彼氏は怒らない、怒ってもいなくならない、彼氏が反省するはずだ(そうすべきだ)となんとなく捉えている。というか彼氏もいずれ愛想を尽かすのではということに危機感を抱いていないから、思いやるということを全くしていないのである。彼氏が電話を突如切ったことで、やっと自分がやったことがどのようなことなのか悟り、落ち込んだ。

愚かなことではあるが、彼氏の事情や気持ちを考えるところまでいかないぐらい被害者意識が強くなっていた、とも言えるだろう。単純に寂しかったのである。それが彼女の言葉には表現されていなかったし、彼氏を責めるニュアンスしかなかったことが残念であった。

ところで彼女は最終的に自己嫌悪に陥っているが、彼女が我慢すれば、この事件は防げたのだろうか。ここが厄介なところである。

例えば「咳(せき)」を思い出してほしい。我々は咳が出る風邪をひいたときに咳することを我慢できるだろうか。実際やろうと思えば、咳が出そうになるのを、二度三度は我慢したり散らしたりすることができるだろう。しかし、もう少し長いスパンで見れば、まず間違いなく出るのである。恋愛シーンにおいても、このような構図で捉えてほしいことがたくさんある。

問題文の彼女は自己嫌悪に陥っているが、何かむしゃくしゃして言いたくなったこと自体は、咳のように、必ず出るはずのものだったのである。だから咳が出たこと自体を悔いる必要はない。たとえ「我慢することができたはず」だと思ったとしても、それは間違いである。今回は我慢できても、咳のように、必ず出るはずのものだった。出るものは出る、仕方がないもの、という前提で捉えたほうが正確である。

だから「またやってしまった」と自己嫌悪に陥るよりも、ではこの咳は必ず出るものという前提で、どう付き合っていくのかを考えなければならないのである。咳ならば、マスクをして人に吹きかけないとか、水際の対策になるだろう。問題文で言えば、彼氏にぶつけてしまっても後で謝ったり、そのままぶつけるのではなく表現をなんとかするとか、そういったところでフォローしていくしかないのである。咳が出ること自体は受け入れてもらうしかないし、もっと長い時間をかけて改善していくしかない。それぞれの人が持っている課題の一つであり、一回一回「また止められなかった」などと考えるような類のものではないのである。

この二人が組み合わさればほぼ間違いなくこういうことが起きたろう、この人の経緯からすればまず間違いなくこういった問題に当たったろう、というようなことが世の中にはたくさんある。そういったときに「咳」を出さないようにしようと考えても無駄だし、「咳」そのものを治療しようとしても無駄なのである。咳という症状の一回一回に追われないで、もう少しカメラを引いて捉えたほうが良い。

そして、そこからが本当の悩み(課題)なのである。

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